研究概要 |
病原性細菌の細胞壁成分として、最近いくつかのセリノールリン酸基を有する新規グリセロ糖脂質が単離されその平面構造が提出されている。これら糖脂質の構造は、1)アミノ酸部位、2)糖部位、3)グリセリド部位に分割でき、本研究では、各部位の絶対構造を分析化学的手法によって、全体の絶対配置を、立体選択的合成に基づく有機化学的手法によって決定する手法の開発を試みた。 分析化学的手法においては、研究代表者が既に開発を行なっている蛍光性不斉誘導体化試薬と蛍光検出高速液体クロマトグラフィーを利用した。研究の結果、 1)超微量光学活性アミノ酸の一斉分析法の開発(1996年、Anal.Sci.)、 2)アミノ化糖の超微量絶対構造分析法の開発(1996年、J.Carbohydr.Chem,並びに、1997,Anal.Biochem、印刷中)、 3)光学活性ジオール類の選択的検出法としての励起子型HPLC-CD分析法の開発(1997,J.Am.Chem.Soc.印刷中) を行なう事ができ、新規糖脂質の部分構造の絶対配置がこれらの方法によって極微量に決定できることを示した。 有機化学的手法においては、 4)レトロウイルス(HTLV-I)に感染したT-細胞に見位出された新規グリセロ糖脂質の全合成を完成し、その絶対構造を決定した(投稿準備中)、 5)光学活性セリノールリン酸の量法の光学異性体を立体選択的に合成する方法を確立した(投稿準備中)。 現在、天然から得られている、もう一つの新規グリセロ糖脂質の全合成を進行中である。同時に、これらの糖脂質を高分子に固定化することによって、生合成経路の解明や生理活性研究に有用な高分子材料の開発研究を進行させている。
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