肥満の原因遺伝子であるob遺伝子の機能及び発現調節メカニズムを食餌及び食欲との関連において解明することを目的として以下のような研究を行った。 1)本研究では動物実験にラットを用いるので、まずマウスのob遺伝子の塩基配列を利用してプライマーを作成し、ラット脂肪組織よりRT-PCR法によりラットob遺伝子をクローン化した。さらに、ob遺伝子を大腸菌において発現させ、活性を有するob遺伝子産物(レプチン)を得た。今後はこのレプチンを細胞レベルでの実験に用いる予定である。 2)栄養条件とob遺伝子発現、食欲との関係を検討するため、完全食、無タンパク質食、必須アミノ酸欠乏食などで飼育したラットの脂肪組織におけるob遺伝子発現量をノザンブロティングにより測定した。その結果、栄養条件が悪く食欲が低下し、体重が減少する食餌条件下ではob遺伝子発現量が減少することが明らかとなった。従って無タンパク質や必須アミノ酸の給餌による食欲の低下はレプチンの作用とは関係しないことが示唆された。 3)インスリンとob遺伝子発現の関係を明らかにするためにストレプトゾドシン(STZ)投与による糖尿病誘導ラットおよびII型糖尿病モデルラットについてob遺伝子発現を調べた。その結果、両糖尿病モデル動物とも本遺伝子の発現が顕著に低下すること、またSTZ糖尿病における発現の低下はインスリンの投与によりコントロールと同じレベルに回復することが明らかとなった。従ってインスリンは本遺伝子の発現を制御していると考えられる。
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