研究概要 |
1.キャベツ抽出物による担癌時高脂血症改善機構の解析と有効成分の同定 腹水肝癌AH109A移植ラットに,実験1では標準の20%カゼイン食(20C,対照食)またはこれにキャベツ抽出液凍結乾燥標品を添加した実験食を2週間自由摂取させた.実験2では3群の肝癌移植ラットに20Cを摂取させ,各群に水(対照群),キャベツ抽出物(CJ群)またはS-メチルシステインスルフォキシド水溶液(SMCS群)を1日1回合計14回経口投与した.その結果,投与法によらずCJは肝癌移植により上昇する血清総コレステロール(Ch)および超低密度+低密度リポタンパク質-Ch濃度を低下させた.CJのこの作用は,宿主肝臓でのCh 7α-hydroxylaseの活性上昇によるChの胆汁酸への変換亢進とそれに続く体外へのステロイド排泄増加によること,SMCSもCJと同様な作用を示したことからCJ中の有効成分の一つはSMCSであることが明らかとなった. 2.キャベツ抽出物単独またはリポ多糖との併用による癌増殖抑制効果 腹水肝癌AH109A移植後10日目のラットに各種濃度(0,0.1,1,10,100%)のCJを経口投与しその1,3,5および12時間後にリポ多糖(LPS,10μg/100g体重)を腹腔内注射した.その2時間後に血清,固型肝癌および脾臓のTNF-αレベルを測定した.その結果,CJの投与量が1%で投与3〜5時間後に血清および組織TNF-α量が最大となった.この結果から,CJ濃度1%,CJ投与3時間後にLPSを投与することとした.ラット背部へAH109Aを移植後10日目に,固型癌の大きさが等しくなるように群分けし,(1)水,(2)1%CJ,(3)水+LPS,(4)1%CJ+LPS,および(5)100%CJ+LPSを13日間投与した.その結果,固型癌重量は1%CJ+LPS群で50%の有意な低下が認められたのに対し,100%CJ+LPS群では15%程度の低下傾向を示したに過ぎなかった. 3.キャベツ抽出物による腫瘍壊死因子α産生刺激機構の解析 細胞培養系で,TNF-α産生に対するCJの作用を解析した.全脾臓細胞系ではCJは濃度依存的にTNF-α産生能を上昇させ,その産生量はインターフェロン-γを作用させた際の値に匹敵した.しかし,腹腔マクロファージではCJによるTNF-α産生刺激作用は認められなかった.一方,T細胞の共存下ではマクロファージのTNF-α産生がCJにより刺激された.すなわち,CJはT細胞に作用し,マクロファージを活性化する因子を放出させることによりTNF-α産生を間接的に活性化するものと考えられた. 4.抗癌作用を示すキャベツ抽出物中の有効成分の特性 脾臓細胞に対するTNF-α産生刺激効果を指標にして抗癌作用を示すキャベツ抽出物中の有効成分の特性を検討した.分子量,熱安定性,酸安定性を調べた結果,有効成分は分子量10kDa以下で,熱および酸に比較的安定な物質であることが認められ,有効成分はタンパク質を含まない物質であることが推定された.有効成分の同定は,今後引き続き検討する必要がある.
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