研究概要 |
本研究では単に環境因子と土壌動物群集と関係を調査するだけでなく,近縁種間の種構成の時系列的な変化,生活史形質の分化,生殖行動を中心とした種間の相互住用を考察するために,以下のような調査内容に取り組んだ。 (1) 森林の施業が地表性昆虫群集構成に及ぼす影響。 林縁的環境で甲虫目の種多様性の上昇し,施業による撹乱の影響で種構成の変化も認められたが,群集構造の年次変動や季節変動も大きいものであった。 (2) 地域的な近縁種の種構成や繁殖季節など生活史分化の把握。 オサムシ科の多くの種で活動性の季節変化パターンを調査し,いくつかの亜科や属で春繁殖型,秋繁殖型の2タイプへの分化が,並行的におこっていることが明らかになった。 (3) オサムシ科を対象とした近縁種間の野外での分布状況の把握,特に側所的分布をする種についての境界付近についての精査。また近縁種間の相互作用,特に生殖行動が分布状況や種分化に及ぼす影響を明らかにするための飼育実験,交配実験。 Ohomopterus亜属(Carabus属)の近縁種間の交雑とそれが種分化に及ぼす影響について,新しい進化パターンに関する考察を行うことができた。異所的種分化後の二次的な接触の際,生殖隔離が不完全に機能することによって同化が妨げられて側所的分布が維持され,一方で自然淘汰を受けにくい遺伝子の浸透がおこるという,網目状進化の実態の一端が明らかになった。
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