研究概要 |
研究助成を受けて行った研究は大まかに1)地下水動態の調査と地下水が渓流や氾濫原の地形にどのような影響を及ぼしているかということの検討,2)地下水動態を中心に渓流や氾濫原等の環境動態を総合的に把握すること,この二点に分けられる.第一点目に付いては,北海道北部の野渓の氾濫原を調査対象とした.この流域はほとんど人義的な改変は行われておらず,河道も氾濫原も自然のままの状態である.氾濫原内には放棄流路や旧流路の痕跡が多数存在している.また河岸には湧水が湧いている個所が多数存在する.そして特異な洗堀地形が見られる.この洗堀地形には河岸を半球状にえぐった小規模なもの(お釜)と,細長く廊下状に穿かれた形状(トレンチ)がある。この成因に地下水が関係している可能性が高いと考え,これを確認するための調査を行った.具体的には地下水動態の観測(ピエゾメータ作設,地下水位の降雨との応答関係調査,トレーサによる地下水経路の追跡,水質調査等)を行った.その結果,地下水に古い(嫌気的な環境に長時間あった)ものとそうでないもの,河道の水位の変動と非常に応答のいいものなどがあることがわかった.これらのことから,氾濫原内の透水性の高い部分を活発に流動する地下水が存在することが明らかになり,上記の洗堀地形の形成にこの地下水が関与していることが強く示唆された。第二点目については,近年生態学において注目されているhyporheic zone(河床間隙帯)に沖積過程が関係し,沖積地の構造や地下水動態が多様な環境をもたらす要素となっていること,このことから洗堀・堆積や流路変動といった現象が渓流生態系のを規定していることが導き出された.
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