研究概要 |
スギの材色は、材価を大きく左右することから、材色の形成や変色を研究することは大変重要なことである。特に、最近スギ心材の黒色化現象が大きな問題となっている。材色と密接に関係する成分として、ノルリグナン型フェノール性成分(以下ノルリグナン類と呼ぶ)がある。スギはagatharesinol,sequirin-Cを主成分とする個体(AS型)とsugiresinol,hydroxysugiresinolを主成分とする個体(SH型)があり、ノルリグナン類タイプから2つに分けられる。このため、両タイプのスギの黒色化現象とその防止方法を検討し、次のような成果が得られた。 1.発生原因黒色化する部分では、(1)AS型、SH型いずれのスギも急速にノルリグナン類が消失すること、(2)ノルリグナン類の内sequirin-C,hydroxysugiresinolの消失が著しいこと、(3)極めて含水率が高いこと、(4)カリウムイオンと炭酸水素イオンが多量に存在し、炭酸水素カリウムが蓄積していると推定されること、(5)pHが高くアルカリ性を示すこと。(6)sequirin-Cはアルカリにより暗紫色に急速に変色すること。この様に、ノルリグナン類の内、特にsequirin-Cが、スギ心材のアルカリ化、高含水率化によって変質し、心材が黒色化するものと結論された。 2.黒色化防止黒色化する部分は、(1)酸処理により黒色化がある程度抑えられること、(2)還元処理(アスコルビン酸処理)により黒色化が防止できること。(3)黒色化原因成分であるsequirin-Cの変質を還元処理で防止できること。この様に、酸やアスコルビン酸の中和・還元反応が有効で、スギの黒色化を防止することができると考えられた。 以上が研究成果の概要であるが、何故スギ心材のアルカリ化が生じるのか、ノルリグナン類以外の成分がどの様に黒色化に影響しているかについては、今後の重要な研究課題と考えられる。
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