研究概要 |
プレコート紙や低圧メラミン樹脂含浸紙を表面に化粧貼りしたパーティクルボードやMDFなどのボード類を用いた住宅内装資材あるいは家具類の製造では,部材同志の接合等に貫通穴あけ加工が施されることが多い。この加工にともなう材料裏面に生成するバリの抑制方法の確立は,生産現場から強く要望されている。この抑制方法の1つとして,筆者はこれまでに貫通穴あけ加工中に抜け際と進入際の1回転あたり送り量を変化させてバリを抑制する方法を考案している。本研究は,工具先端形状がバリの生成に及ぼす影響を検討することを目的として,国内外で市販されている先端形状の異なるけづめ付きビット,けづめを有しない貫通型ビットおよび先端角の異なるツイストドリルを供試して,各種化粧貼りボードに貫通穴あけ加工を行い,バリの生成状況を詳細に調査した。調査結果より,貫通型ビットとツイストドリルでは,加工穴出口側のバリはけづめ付きビットの場合に比し小さいが,入口側にバリが生成することが判明した。ツイストドリルでは,先端角によってバリの生成状況が異なり,先端角の80〜160゚では118゚が最適先端角であることを明らかにした。さらに両工具について,加工材料両面のバリを最も抑制する進入際と抜け際の1回転あたり送り量と加工時間が最も短くなる1回転あたり送り量の変量位置を検討した。けづめ付きビットについては,加工穴入口側のバリは全く生成しないが,加工穴出口側のバリは上記両工具に比し大きく,1回転あたり送り量を制御してバリの抑制を図っても加工時間が極めて長くなるので,貫通穴加工には不利な工具であることを明らかにした。以上のように,けづめを有しない貫通型ビットとツイストドリルを用いて,1回転あたり送り量を穴あけ加工中に変量させて貫通穴加工を行うことが化粧紙貼りボードのバリを最も抑制でき,さらに最も加工能率の良い方法であることを明らかにした。
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