研究概要 |
本研究では、チアミンの添加によってシイタケ子実体が誘導される原因を明らかにするために、チアミンの栄養菌糸成長および子実体形成に及ぼす影響を,チアミンの菌糸体内への取り込みと関連付けながら検討した。栄養菌糸成長に関しては,昨年度の検討ではチアミン濃度の影響があるように思われたが、約15.mg〜約1.5μg/literの濃度範囲でさらに詳細に検討したところ,結局チアミンの影響は認められなかった。さらにこのことを確かめるために,チアミンを添加していない種々の寒天培地を用いてシイタケの継代培養を繰り返したが,チアミンの欠乏によると思われる栄養菌糸成長の明らかな抑制は見られなかった。一方,シイタケの子実体形成には少なくとも15μg/liter以上のチアミンの添加が必要であり,それ以下では全く形成されないことが分かった。したがって,シイタケは子実体形成には比較的高濃度のチアミンを要求するものの,栄養世代の菌糸成長にはチアミンを要求しないものと考えられた。培地中のチアミンは,シイタケの栄養成長期間に当たる培養初期に、そのほぼ全量が培地から菌糸体内へ取り込まれることも明らかとなった。さらに、菌体内に取り込まれたチアミンのうち、生理活性の高い二リン酸エステルの割合が生殖成長に移行する直前に極大に達することが明らかとなった。 以上の検討により、チアミンはシイタケの栄養菌糸成長を促進することにより、子実体の形成を速めるというような間接的なものではなく、栄養菌糸成長から生殖成長への転換期において直接的かつ必須の役割を果たしていると考えられた。
|