研究概要 |
淡水魚(コイ・キンギョ)を中心として,その腎臓の詳細な組織的検査,遊泳状態の魚から,様々な臨床検査の方法,電気生理学的手法,極微変化の計測手法(腎血液流量やカテコラミンの局所変化の把握など)を使って,魚の循環・排泄系の動的な機能変化の様相,および,その調節に係わっている因子を様々な方面から同時的に調査した。 魚類腎臓におけるネフロンの分布は一様ではなく,部位によって数やサイズに偏りがある事,また,塩分等の環境条件変化に伴う腎組織変化は前方から生じることが判った。 また,各ネフロンへの血液流入量(分布)は一様ではなく,環境条件の変化は腎臓各部への血液の流量を微妙に変動させていた事から,腎臓におけるこれらの局所的な変化が,全体的な尿生成量などに影響しているものと推察された。 魚類の腎臓における尿量の調節は,主に,糸球体濾過量(GFR)を変化させることによって行われている。このGFRの変化には,腎血液流量と腎動脈血圧が大きく貢献しており,その調節には血液中のカテコールアミン,アンギオテンシンII,プロスタグランジンE_2などのホルモン濃度の変化が大きく貢献している事が判った。一方,神経遮断剤を用いた実験から,魚においても腎機能調節には神経系が関与しているが,その役割はそれほど大きくないことが推察された。 加えて,環境変動に伴う腎機能変化は,初期には腎臓各部での局所的な腎血液流量や腎動脈血圧等の変化が直接影響しており,この様な変化は心機能等の大循環系に変化がなくても生じる事が示唆された。なお,この腎臓の局所域における腎血液流量や動脈血圧の変化には,腎臓内カテコールアミン濃度の局所変化が大きく影響しているものと推察された。
|