研究概要 |
これまでに演者らはコイ補体C3のcDNAを3クローン単離したが、本研究ではRT-PCRを用いてこれら以外の変異C3を検索し、コイにおけるC3の多形性を検討した。C3のα鎖の中央付近に存在するチオールエステル部位のアミノ酸配列を基にセンスプライマー(P1)を合成した。一方、チオールエステル部位から約130および200アミノ酸残基C末端側に存在する、良く保存されたアミノ酸配列(VIAMQEAおよびWTVPGQH)を基にアンチセンスプライマー(P2,P3)を合成した。コイ肝膵臓cDNAライブラリーを鋳型としたPCRによってP1-P2間、P1-P3間を増幅し、塩基配列を決定した。プライマーの設計に用いたアミノ酸配列から予測されたように、P1-P2およびP1-P3を用いたPCRによってそれぞれ433bpと649bpのDNA断片が増幅された。両断片をpBluescriptII SK(-)ベクターにサブクローニングし、無作為に選んだ44クローンから制限酵素マッピングによって選別した32クローンの塩基配列を解析したところ、8種類の配列にグループ分けできた。最近、C3と同じくチオールエステルを持つ補体成分であるヒトC4を用いた解析によって、C4の1106番目のアミノ酸残基(His/Asp)が約100残基離れたチオールエステルの反応速度(すなわち異物に対する結合能)の高低を支配していることが判明したが(Dodds et al.,Nature,379,177-179,1996)、コイC3ではこの部位に相当するアミノ酸としてHis,Ser,Glnの3種が認められた。以上の結果から、コイには異物に対する結合能が異なる、少なくとも8種のC3が存在することが推測された。
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