東アジア諸国の穀物自給率にはバラ付きがでてきている。日本、韓国、台湾などの工業先進国の穀物自給率は低下する一方、ベトナムやビルマでは米の輸出が急増している。伝統的な米の輸出国であるタイでは依然としてその地位を保っているが、工業化の進展と共に、次第にその有利さは低下しつつある。 これらの中にあって特異は立場にあるのが、マレーシアとインドネシアである。マレーシアは100%の自給を初めから放棄し、「80%の自給率」を目指している。また、インドネシアは米の100%自給を目指してきたが、最近では、むしろ、「多様化」を農業政策の中心に据えるようになってきており、アメリカの自由化政策に対する協力姿勢も積極的である。 今後の展開としては、AFTA内における食料に関する地域内分業の計画が浮上することが考えられる。しかしながら、分業をすすめる場合、農業以外の分野における地域内分業の成立が不可避であり、ハードルはかなり高いかもしれない。 最後に、2010年の米の自給率予測を示すと、日本が約80%、台湾が約70%、韓国が約60%である。韓国はこれらの中では米のミニマムアクセスに関しては最も有利な条件を得たにも関わらず、米の自給率低下が著しいことがわかる。米消費が急速に低下していくことと、反収が相対的に緩慢な増加しか見込めないことが主な原因である。
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