研究概要 |
河川の水質環境を保全するために必要な汚濁負荷制御に関する最適化モデルについて考究し,線形計画法の枠組みの中で処理できる決定論的最適化モデルと確率論的ロバスト最適化モデルを創築して,それらの有効性を検証した.得られた成果は以下のように要約できる. (1) 河川の水理学的,水質工学的ダイナミックスを考慮に入れ,河川に与えられた水質環境基準(BOD及びDO基準)を達成するという制約条件下で許容される汚濁負荷量(BOD負荷量)の最大量と流路に沿った汚濁量の適正配分が推定可能な最適化モデルを構築した. (2) 流れ及び水質因子の輸送(移流・分散)を等式制約条件として導入するには,基礎微分方程式を有限要素法で離散・近似し,最適化モデルの汎用性を高めた. (3) 任意に分合流するネットワーク状の河川にも適用可能な決定論的な最適化モデルの構築に成功し,このモデルによればきわめて良好に複数の汚濁源からの汚濁負荷量の総量とその最適配分が求まることが明らかとなった. (4) 河川流量,水深,流水断面積,水温,風速,塩分濃度といった数理モデルに含まれるパラメータの不確実性が解に反映される確率論的最適化モデル(ロバスト最適化モデル)を構築し,単一流路河川への適用の結果,モデルは意志決定者の意図を的確に反映する解を与え,河川の水質管理を行う際の代替案作成に,従来の確率計画モデルよりも優れて有効なものとなることが明かとなった.
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