研究概要 |
ガラス室内に設置した計量型ライシメータ(直径1.5m,土層厚1.6m,海岸砂充填)を用いて,平成8年9月中旬から約1カ月間ならびに9年8月中旬から約1カ月半の間,オレンジを対象に塩水潅漑を行った.潅漑水はNaClとCaCl_2によって,2,000mg/lの塩分濃度(電導度:4.0dS/m)になるように調合した.潅漑は点滴潅漑方式によって毎日行い,毎日の潅水量は,前日の蒸発散量の1.2倍とした.日蒸発散量は水道水で潅漑した場合(対照区),最大4.2kg/day(ライシメータ面積を用いて水深に換算すると,2.4mm/day)であった.対照区の蒸発散量と計器蒸発量との間には相関係数0.955の強い相関があった.塩水潅漑による蒸発散量の影響は潅漑開始直後から表れ,2週間経過した時点で塩水潅漑条件下の蒸発散量は普通水潅漑条件下に比べて約20〜25%減少した.減少割合の変化はほぼ直線的であった.オレンジの根元から10,30,50cmの距離において,深さ10〜60cmの深さまで採土法によって実験終了後に測定した飽和抽出液の電導度は根元付近で高く,最大3.5dS/m,距離10cm地点の深さ10〜60cmで,1.4〜1.6dS/m程度の値を示した.従来の研究結果によれば,1.7dS/mの値まではオレンジの収量に全く影響がなく,3.3dS/mの値で収量が25%減少すると言われており,蒸発散量と収量の違いがあるが,本研究では塩水潅漑による生育への影響が大きいことを示した.有限要素法を用いて,塩水潅漑開始後ならびにリーチング潅漑開始後の土壌水分と土壌塩分の挙動に関するコンピュータシミュレーションを行った.理論解や他の公表プログラムとの比較によって,プログラムのアルゴリズムは正しいことが確認できたが,水分と塩分の実測値と比較すると,定量的には十分な精度が得られなかった.表面ならびに底部の境界条件,水分ならびに塩分移動に関するパラメータの値などの再検討が必要である.
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