研究概要 |
本研究の目的は、ハウス内土壌水分(pF値)の変動を予測し、それをリアルタイムで最適制御するシステムを開発することである。平成8〜9年は、土壌水分制御システムと環境監視システムの構築、土壌水分リアルタイム制御法の検討、pF値におよぼす日射量、温度、湿度の影響計測を行った。目的変数をpF値の変化量とし、説明変数を温度、湿度、日射量とした時の重回帰分析を行った結果、1時間前の温度、2時間前の日射量を説明変数に用いることで、pF値の変動を重回帰式で予測し適切な灌水量を求める方法(重回帰式制御)を確立した。 平成10年度は、上記の重回帰式制御と、上記気象条件からpF値の変動をファジィ推論する方法(ファジィ制御)の2種類の制御方法を用いて自動灌水システムを構築し、これらを実際のハウス内に設置して農家の手灌水作業(慣行区)の栽培結果と比較した。特に灌水作業の頻繁なキュウリのハウス栽培について実験的に検討した。全実験期間で灌水した総灌水量は、慣行区で1,330リットルであったのに対し、重回帰式制御区で641リットル、ファジィ制御区で917リットルであった。またキュウリの品質と収量について比較した結果、全実験期間におけるA品質の割合は、慣行区で47%であったのに対し、重回帰式制御区で43%、ファジィ制御区で47%であった。同じくB品質では、それぞれ33%、36%、34%であった。また全実験期間における各区の1株当たりの収量は、慣行区で2,006gであったのに対し、重回帰式制御区で2,067g、ファジィ制御区で2,338gであった。1株あたりの収入については、それぞれ847円、885円、l,026円であった。 以上、重回帰式制御区は慣行区と同等の収量で節水型制御であること、ファジィ制御区は品質と収量、収入で他の実験区と比較して良好な結果を得たことから、これらの方法は自動灌水制御に有効であることを示した。
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