研究概要 |
放牧草地のシロクローバ個体の時空間ダイナミクスを解明するために,まず測定法と記述法を考案した。次に被食環境下で個体の挙動を正確にモニターするための,個体マ-キング法を開発した。これにより,ペレニアルライグラス主体草地におけるシロクローバ個体の挙動を詳細に記録して解析した。その結果,以下の結果が得られた。(1)個体の拡がりは季節的に拡大・収縮しやすく,特に冬から春に著しく収縮し分断した。これは降霜と融解のサイクルによった。(2)分断箇所を詳しく分析した結果,ストロン途中の発根・分枝位置を生かすように分断するものが見つかった。翌年の主根になる位置を生かすように分断する可能性が高い。これは従来のクローン成長の認識をくつがえす成果である。(3)個体が極度に収縮する現象(クラッシュ現象)を確認した。(4)ストロン部分の挙動を解析し,分枝戦略の実態を把握した。(5)ウシによる被食の様相を把握した。被食されず健全なままの葉は少なく,主に頂芽付近に集中して分布した。(6)集約放牧下ではシロクローバ個体に均一かつ強い被食ストレスがかかった。(7)集約放牧下のシロクローバ個体は,被食ダメ-ジと矮小化反応によってサイズを激減させ,個体全体の死亡リスクを高めることが確認された。
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