研究概要 |
北海道産エゾヤチネズミの個体群変動を解析するために、以下の前提を置きpersonal computerを用いてBASICによるプログラムを作成した。1)個体群を月齢に分けて、2ヶ月齢以上の個体数(成熟個体数)を計算する、2)3ヶ月齢以上の個体が妊娠するものとする。出生数は雌雄を区別せずそれらの合計に出生率を乗じて算出する、3)2ヶ月齢の個体数は、そのときより3ヶ月前の3ヶ月齢以上の個体数に出生率(B_2)をじようじて算出する、4)各月齢の個体数は前月の各月齢の個体数から死亡率(1ヶ月当たり)と各月齢の個体数の積を減じて算出する。死亡率は、固有の死亡率D_0と前月の総個体数に比例して増加する項との和とする。その比例定数は個体の最大増加率R_m(=B_2-D_0)を環境収容力Kで除した商とする、5)季節による環境の変化およびそれに伴う生体が受ける影響は、パラメータK,B_2,D_0をその月の関数として表す。 以上の前提から、I月におけるJヶ月齢の個体数N(J,I)および総成熟個体数NT(I)を、まず各パラメータに季節変動を取り込まずに計算した。その結果、固定死亡率D_0を0.2とし、出生率B_2を変化させたとき、B_2<2.8では時間とともにB_2に応じた一定値に収束するが、2.8以上では振動が現れ、一定値に収束しない。D_0を0.2以下にすると、B_2が2.8より小さい領域で振動が現れ、D_0=0ではB_2≧2.2で振動が現れ、B_2≧2.8ではカオス的な振る舞いを示した。 次に季節による環境の変化を、Kを自然林における測定値に対応する値として取り込み、B_2の冬季の値を少なく見積もって計算した。その結果、年間変動の観測値と対応のよい2峰性の経時変化が得られた。これらのパラメータの変化により個体群の急激な増加(大発生)が示される可能性を継続して検討中である。
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