研究概要 |
排卵直前の卵胞を構成する顆粒層細胞においてPGF2αが合成分泌されることが明らかとなり、PGF2αが卵巣内局所調節因子として作用することが示唆されている。しかし、その生理作用は多くの研究が行われているにもかかわらず、ほとんど解明されていない。PGF2αは細胞膜上の特異的なレセプターを介して作用することから、レセプターの発現とその調節機構の解明はPGF2αの生理的役割を明らかにする上で重要な意義があると考えられる。そこで、本研究ではウシ顆粒層細胞のPGF2αレセプター発現について遺伝子レベルでの検討を試みた。 1,ウシ成熟卵胞あるいは小卵胞より採取した顆粒層細胞のPGF2αレセプターmRNA(PGFRmRNA)発現量について検討した。すなわち、採取した細胞を10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F-12で培養した(37.5C,5%CO2in air)後、Guanidine thiocyanate法に従って総RNAを抽出してNorthen blotを行い、PGFRmRNAの検出を行った。その結果、熟成細胞より採取された顆粒層細胞においては、PGFRmRNAが検出されたが、小卵胞に由来する顆粒層細胞では認められなかった。 2,小卵胞に由来する顆粒層細胞の分化あるいは黄体化過程におけるPGF2αレセプター調節機構を検討しうる実験系の確立を目的として、培養期間の延長に伴う培養顆粒層細胞のステロイド合成能の変化、形態的変化を検討した。その結果、顆粒層細胞を10%子牛血清を含むDMEM/F-12でInsulinとForskolin存在下において、216時間培養することにより機能的にも形態的にも大型黄体細胞に類似した細胞に分化することが明らかになった。本研究の成果は、日本繁殖生物学会の機関誌であるJournal of Reproduction and Developmentに掲載された。 以上の結果から、顆粒層細胞の分化に伴いそのPGFRmRNA発現が誘起されることが明らかにとなった。また、PGFRmRNA発現調節機構の解明に有用な顆粒層細胞の黄体化を誘起しうる培養系が確立された。
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