研究概要 |
人工胎盤開発のための基礎的研究として、脱落膜反応を誘起したラットの子宮の細胞質画分から脱落膜反応誘起因子の精製と同定を試み、さらにその因子がin vitroで子宮内膜間質細胞の脱落膜細胞への分化を誘起するかを調べた。まず、脱落膜反応誘起後の偽妊娠ラットの子宮の細胞質画分の脱落膜誘起活性の変動を調べ、脱落膜反応誘起後5-10日目に活性が最も高いことを明らかにし、この時期の細胞質画分を用いて、この物質の精製を試みた。この物質は、Sephadex G-25のゲルろ過により蛋白質などと同じ高分子画分に溶出された。また、pH7.0では、陽イオン交換樹脂にも陰イオン交換樹脂にも吸着されず,この物質はこのpHが等電点であるか、あるいはこのpHでは荷電を持っていないことが示唆された。そこで、蛋白質であるかどうかを明らかにするために、細胞質画分を100℃で3分間熱処理し、その100,000xg上清の反応誘起活性を調べたところ、熱処理前と同等の活性があった。申請時には、この物質は、蛋白質であることを想定してが、多糖のような蛋白質以外の熱安定性の高い高分子であることが示唆された。現在、精製同定作業中である。また、この物質は熱安定性が高いので、熱処理した後の遠心上清画分を部分精製物として用い、この物質がin vitroで子宮間質細胞の分化を誘起するかを調べた。偽妊娠5日目のラット子宮をコラゲナーゼ処理して解離してきた細胞を用い、部分精製物を5%添加あるいは不添加のTCM199で5日間培養した。しかしながら、2核細胞のような脱落膜細胞様の細胞はほとんど観察されなかった。おそらく、この脱落膜誘起物質は、直接間質細胞の脱落膜細胞への分化を誘起するものではなく、ある種の細胞に働いて、その細胞の働きにより2次的に分化を誘起しているものと推察された。現在、妊娠中の子宮内で侵潤が高まる白血球系細胞に注目し、この物質の作用を検討中である。
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