研究概要 |
ウシMHC(BoLA)クラスII分子の免疫応答における役割をDNAレベルで解析すると同時に、牛白血病ウイルス(BLV)感染牛を用いて、BoLAクラスII遺伝子の多型性とウシの疾病に対する感受性との関連を分子レベルで解析する。以上により、ウシの生体防御機構を解明する突破口としたい。 1)BoLAクラスII抗原の免疫応答における役割を明解にするため、cDNAクローニングを試み、6種類のBoLAクラスII遺伝子、DRA,DRB3,DQA1,DQA2,DQB1,DQB2のcDNAクローンの単離に成功した。 2)各遺伝子の発現と機能について解析した。ウシ末梢血リンパ球における転写を確認するため、各遺伝子の第2エクソンを特異的に増幅可能なPCRプライマーを設計し、ウシリンパ球細胞株より抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行った。また、α鎖及びβ鎖のcDNA(DRA/DRB3,DQA1/DQB1,DQA1/DQB2,DQA2/DQB1,DQA2/DQB2)を、COS-1及びマウスL細胞に導入し単クローン性抗体を用いて、発現、蛋白化学的性状及び混合リンパ球培養試験を行った。その結果、機能発現可能な遺伝子として、BoLA-DRA,DRB3,-DQA1,-DQB1,-DQA2,-DQB2を同定に成功した。 3)BoLAクラスII遺伝子の多型と疾患感受性との相関を明らかにした。最も多型に富み機能的な蛋白質をコードするBoLA-DRB3遺伝子に着目し、BLV感染未発症牛、BLV感染リンパ球増多症牛および白血病発症牛のDRB3の第2エクソン267塩基対をPCR法により増幅後、塩基配列を決定した。β^<78>残基がTyrであるアリルをホモで有する個体は、BLVによる白血病発症に感受性であることが、一方、Lys/Arg-β71,Gln-β74,Val-β78のアミノ酸配列を有するアリルが、抵抗性である可能性を示唆された。このように、BLVによる白血病発症の感受性をBoLAクラスII遺伝子が規定している可能性が示唆された。
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