研究概要 |
1.犬赤血球膜に結合IgG抗体の競合性固相化ELISAによる定量法を開発した(文献1).すなわち,ELISA用マイクロプレートに適正濃度の犬IgGを固相化し,ブロッキング後,各ウェルに被検体洗浄赤血球または犬精製IgG,およびペルオキシダーゼ標識抗犬IgG/Fabを加え,競合性ELISA反応を行わせて測定した.次に,本法を用いてバベシア感染犬の赤血球膜結合IgG量を測定したところ,正常犬では13.5±4.6ng/mlであったが,一方,ク-ムス試験陽性の重篤な貧血を呈した感染犬では34.0-126.0ng/mlと高く,またク-ムス試験陰性でも感染犬では12.6-30.7ng/mlと正常犬のそれより増加しており,バベシア感染犬の赤血球が脾臓などの網内系細胞に貧食され破壊されやすいことが示唆された(文献2). 2.バベシア感染犬赤血球に結合したIgG抗体が赤血球膜のどの部分と結合するか調べるため,実験的にバベシア感染による重篤な貧血症を作出した犬の赤血球から遊離させたIgG抗体を感染前の赤血球膜をSDS-PAGEで分画した各バンドをブロッティングしたものに反応させた.その結果,抽出IgG抗体はバンド3を認識していた(文献3).さらに,感染犬血清中の赤血球抗体は、感染赤血球、ノイラミダーゼまたはフェニルヒドラジンで処理した非感染赤血球に吸収された(文献4).このことから、バベシア観戦時に血清中に上昇する赤血球自己抗体は酸化傷害で変性したバンド3に対する抗体であることが示唆された。
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