研究概要 |
夕方,深夜,翌朝の各時に屠殺した成獣雄マウスから海馬台,海馬,小脳基底核,小脳皮質と大脳皮質視覚領のブロックを切り出しパラフィン包理後切片とし,陽性荷電鉄コロイドとケルンエヒトロート,カルボールチオニン,ルクソ-ルファストブル,ナイル青で染色して光顕観察した.夕方に採取した例では,脳の各部位に小数の暗調細胞が認められるのみであった.深夜に採取した例には,脳の各部位に多くの暗調細胞が認められた.すなわち,深夜には小脳基底核の細胞の80%以上が,小脳皮質ではプルキンエ細胞の50%以上が暗調化していた.プルキンエ細胞を除いて,暗調細胞は一般に鉄コロイドで染まる硫酸化プロテオグリカン細胞外基質をもっていた.翌朝(マウスは睡眠中)に採取した例では,脳の各部位(小脳皮質も含めて)で暗調細胞の数は著明に減少していた.以上の所見は暗調細胞は睡眠(安息)によって正常な明調細胞に回復する「疲れた」細胞であり,暗調細胞は固定の悪い細胞や変性細胞でもないことを示す.電顕観察で暗調細胞には著明な脱水状態が認められ,さらに活動型と回復型が区別できた.活動型の暗調細胞はよく発達した粗面小胞体とゴルジ装置をもち,回復型の暗調細胞の粗面小胞体とゴルジ装置はむしろ退行傾向を示した.活動型の暗調細胞は,この回復型の暗調細胞を経て,明調細胞に復すると考えられた.また,暗調細胞はプロテオグリカンと共に生後3週間から出現することも明らかとなった.
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