研究概要 |
本研究は、リンパ管内皮細胞株の樹立によって、生体内でのリンパ管の機能特異性を培養系の中で実証することを目的とした。 (1)リンパ管内皮細胞株の樹立: ラットの乳糜槽(L)、胸管(TD)、横隔膜(DM)、対照として大動脈(A)をコラゲナーゼで処理し、内皮の分離・培養を行った。敷石状配列を示すコロニーを内皮細胞としてステンレス管隔離法、更に限界希釈法を用いて株化することによって、夫々の材料からリンパ管内皮様細胞株(LE1,TD1,DM1)ならびに血管内皮細胞株(AE1)を樹立した。 (2)リンパ管内皮の形態学的同定と機能特異性の解析: A)(1)Acetyl-LDLの取り込み能の検索と、(2)電子顕微鏡による細微構造の観察、さらに(3)リンパ管内皮を認識するモノクローナル抗体B27などを用いての免疫染色を行った結果、Acetyl-LDLの取り込み能はAE1,LE1,DM1,TD1の順に強かった。またLE1,DM1,TD1は全てB27で陽性であり、リンパ管由来の内皮であることが形態学的に実証された。 B)(1)内皮の成長過程に対するEGFやb-FGFなどの影響を見ると、血管由来のAE1には成長促進効果があったのに対して、LE1,DM1,TD1においては無効ないし、むしろ逆効果であった。(2)リンパ球との選択的接着性をcell binding assayで解析した結果、リンパ節細胞はLE1と、胸腺細胞はLE1およびDM1と比較的強い接着が観察されたが、AE1との親和性はいずれも低かった。 以上、本研究においてリンパ管内皮細胞の株化に初めて成功し、機能的にもリンパ管内皮に部位特異性が存在する可能性が示唆された。今後、様々な細胞や巨大分子との親和性・透過性についての部位特異性の有無をさらに検討してゆきたい。
|