研究概要 |
1.マウス唾液腺の器官形成に関わるラミニン由来機能アミノ酸配列の同定とそれらの機能の検討 細胞-基質間の接着や,暮質上での細胞の伸転を促進する活性を指標に得られたラミニンα1鎖Gドメインのアミノ酸配列に由来するAG-10,AG-22,AG-32,AG-56,AG-73(Nomizuら,1995)等の合成ペプチドを胎生13日目のマウス顎下腺原基の器官培養系に加え,これらの外植体の成長におよぼす効果を検討した.AG-73のみが培養顎下腺の分枝形態形成を阻害し,ラミニンα1鎖のAG-73部位(アミノ酸残基2719-2730)が上皮形態形成にとり重要な機能を果たすことが示唆された.AG-73処理外植体では基底膜構造形成が阻害されており,この部位が基底膜形成にも関わると考えられた.一方,異なるラミニンアイソフォームのα2鎖上でAG-73に相当する部位由来のペプチドMG-73,には阻害活性が全く認められず,ラミニンα1鎖のAG-73部位の機能がアイソフォーム特異的であることが示唆された. 2.発生期マウス唾液腺で発現するラミニンアイソフォームの検討 1.の研究で明かになったアイソフォーム特異的機能の生理的理由を明かにするため,ラミニンα2鎖特異的単クローン抗体を用い,様々な発生段階のマウス顎下腺を免疫組織化学で調査した.α2鎖の発現は器官培養に用いた胎生13日目では全ての上皮基底膜で陰性であった.α2鎖は発生の進行に伴い,腺房部基底膜では強陽性となるものの導管部基底膜では陰性のままであった.従来の解析から胎生13日目の上皮基底膜にはラミニンα1鎖が発現することが判っているので,顎下腺上皮はネイティブなラミニンアイソフォームであるラミニンα1鎖を特異的に認識し,それ由来のペプチドにのみ影響を受けたと考えられた.
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