モルモット心室筋細胞を単離し、これにパッチクランプ法を適用して膜イオンチャネル電流を記録した。まず、遅延整流K電流を細胞全膜電流記録した。細胞膜の伸展を加えるため、低浸透圧溶液を与えた。前後で、イオン濃度が変化することを避ける目的で、標準浸透圧溶液としては、NaClを70%量含む溶液にマンニトールを加え、補正したものを使った。細胞の外液を正常浸透圧液から70%浸透圧溶液に置き換えると、1秒の脱分極パルスで活性化する遅延整流K電流が最大2倍の大きさに活性化された。その際、電流活性化の電位依存性や電流活性化の時間経過に明らかな変化を認めることは出来なかった。さらに、脱分極を30秒に延長して、電流の膜電位依存性活性化が飽和した時点で、低浸透圧液を与えても、電流の振幅が増大した。同様な遅延整流K電流振幅の増大は、パッチ電極内に圧を加え、細胞内に細胞内溶液を注入し、細胞を膨張させた場合にも観察された。このような所見に基づいて、細胞膜の伸展は活性化できる遅延整流Kチャネルの総数を増大することに電流振幅を大きくすると結論した。そこで、単一チャネル電流の記録を試みた。通常の先端内径のパッチクランプ電極では脱分極によるチャネルの活性化を記録することはできなかった。そこで、電極先端を5ミクロン以上に大きくした電極を使うことを試みた。細胞に電極先端を軽く当ててもこの大きな電極ではギガシールを得ることはできなかったが、電極に陽圧を加えた状態で、細胞にできるだけ圧着し、急速に陰圧に切り替えると、ギガシールを得ることができた。そこで、脱分極パルスを与えると、まれに1秒パルスの後半で、開時間の長い外向きチャネル電流を記録することができた。チャネルのコンダクタンスは約20-30pSであった。アンサンブル平均で、脱分極パルス中電流のゆっくりとした活性化を確認できた。このチャネルの開閉動態や、細胞膜伸展の効果を調べることを試みているが、依存として、チャネル記録に成功することが希で、成功していない。細胞全膜電流の記録の実験結果はCirculation Researchに報告することができた。
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