研究概要 |
HERG由来Kチャネルは,心筋の遅延整流Kチャネルのうち速い成分を形成する主たる成分(急速活性型遅延整流K電流,IKr)とされている.我々はこれまでIKrはウサギ心臓においては同房結節細胞に豊富に存在し,自動能成立に不可欠な働きを有することを実証してきた.IKrは,古典的な遅延整流K電流とは異なり,強い脱分極側では直ちに不活性化してしまうため,定常状態の電流電圧関係は特微的な内向き整流特性を示すことが知られている.この内向き整流性がチャネル自身のゲート機構によるのか,あるいは他の内向き整流性Kチャネルに見られるようなMg,ポリアミン等によるブロックなのかを単一チャネルレベルで明らかにするために,inside-out法で細胞内物質の効果を検討した.その結果、細胞内のMg,Caイオンやポリアミンを取り去った環境下でも,内向き整流性が維持されており,チャネルの内向き整流性はゲート機構によるものと結論した.一方,従来のチャネル自身のゲート機構と考えられてきた活性化過程を検討したところ,細胞外Caイオンを取り除くことによりチャネルの脱活性化過程が著明に遅延した.このことはチャネルの活性化がCaイオンによるブロックにより生じていることを示唆する. IKrの自動能への役割をさらに検討するため,今年度新たにブタの心臓より同房結節細胞を単離することを試みた.その結果ブタにおいてはIKsの関与が大きく,IKrは自動能に関してはほとんど機能していないことが判明した.このことは,自動能の基本となるKチャネルが種により大きく異なることを示唆しており,ヒトを含む種々の動物種において検討する必要がある.この点については平成9年度の日本心電学会に報告し現在論文作成中である。
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