研究概要 |
酵素処理により得られたモルモット心房筋細胞において、P_2-プリン作動性受容体(P_2-受容体)によるムスカリン性K(K_<ACh>)チャネルの抑制性制御機構についてパッチクランプ法による全細胞膜電流記録(whole-cell recording)実験により検討を行った.K_<ACh>チャネル電流の活性化は細胞外acetylcholine(5.5-11μM)またはadenosine(100μM)投与,もしくは細胞内GTP-γS(100-200μM)投与により行った.P_2受容体刺激は細胞灌流液(細胞外液)中に種々のATPanalogueを投与する事により行った.本研究により以下の点が明らかになった. 1.種々のP_2-アゴニストによるK_<ACh>電流の抑制作用の有効性の順位は,ATP≧2-methylthio-ATP>α,β-methylene-ATPであり,P_<2Y>-受容体の関与が示唆された. 2.細胞外ATPによるK_<ACh>電流の抑制効果の発現は比較的遅く最大反応に達するまで約60-70秒を要し,その情報伝達機構に細胞内を拡散するセカンドメッセンジャーの関与が示唆された. 3.H-7(20μM)にて前処理した細胞においても細胞外ATPはK_<ACh>電流を抑制したため,プロティンキナーゼCの関与は否定的であった. 4.BAPTA(20mM)の細胞内投与によっても,細胞外ATPによるK_<ACh>電流の抑制効果は影響を受けなかったため,細胞内Ca^<2+>もまた関与していないと考えられた. 以上まとめると,P_<2Y>-受容体刺激はK_<ACh>チャネルをプロティンキナーゼCおよび細胞内Ca^<2+>以外の何らかのセカンドメッセンジャーを活性化して抑制していると考えられる.
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