研究概要 |
1。運動中ミトコンドリアで産生された活性酸素(H_2O_2)が,筋の局所的損傷を起こすか否か、関与するとすれば酸化剤としての働きによるのかをチャネル分子レベルで電気生理学的,生化学的に検討した。 2。筋小胞体カルシウム遊離チャネルをリン脂質平面膜に取り込ませ、単一カルシウムチャネル電流を測定した。以下の結果を得た。 (1) 1.5mM H_2O_2を細胞質側からカルシウム遊離チャネルに投与したところ、チャネルの開口確率が上昇した。この効果はSH基還元剤のDTTで抑制された。H_2O_2の筋小胞体内腔側からの投与でも同様にチャネルの開口確率の上昇を観察した。 (2) H_2O_2分解酵素であるカタラーゼを筋小胞体内腔側に与えた後では、H_2O_2の細胞質側からの投与効果は観察されなかった。一方、細胞質側にカタラーゼ存在下にH_2O_2の筋小胞体内腔側からの投与では、チャネルの開口確率は上昇した。 (3)カルシウム遊離チャネルを含む筋小胞体ペシクルにH_2O_2を投与し、SH基の酸化の度合いをSH基蛍光試薬を用い、測定した。酸化は時間依存性を示した。 3。以上の結果は、H_2O_2がカルシウム遊離チャネルの内腔側からSH基に作用したH_2O_2がカルシウムを遊離し、細胞内カルシウム濃度を上昇させることを示している。この現象が前に報告した筋線維のH_2O_2による持続収縮と筋損傷に関与しているものと思われる。
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