研究概要 |
本研究の目標は、ADPβS感受性受容体活性化による膀胱平滑筋細胞の収縮機序の解明であった。その第1段階として、本受容体を介する細胞内Ca濃度の上昇は細胞内Ca貯蔵部位からのCa放出によるのか、もしくは細胞外からのCa流入によるのかを検討した。膀胱平滑筋を酵素処理にて単離し、細胞内にfura2を負荷し倒立顕微鏡下にて細胞内Ca濃度変化を測定した。細胞外Ca存在下にてα、β-Me ATP(1μM)、を投与するとP_<2X>受容体を介する細胞内Ca濃度上昇が観察できた。しかしながら、細胞外Ca非存在下、0.5mMEGTA存在下ではα、β-Me ATPの効果は100μM投与にても観察されなかった。一方、ADPβS(10μM)投与では、細胞外Ca存在下ならびに非存在下とも細胞内Ca濃度上昇を全例で認めた。また、Ca非存在下にて、α,β-Me ADP,ATP,ADP(すべて10μM)もやはり細胞内Ca濃度上昇作用を示した。AchもCa非存在下に細胞内Ca濃度を上昇させ、この濃度上昇は薬剤存在下持続的に維持された。しかし、興味深いことにadenine nucleotide誘導体で見られる細胞内Ca濃度の上昇は持続性ではなく周期的な変動を示した。このことは、ADPβS感受性受容体を介する細胞内Ca濃度上昇の機序がAchによるものとは異なることを示唆した。ADPβS感受性受容体を介する細胞内Ca濃度上昇にGたんぱくを介する情報伝達系が作用するか否かを検討する目的で、全細胞記録法を用いGDPβSもしくはGTPγSを細胞内に投与し検討を行った。細胞内Ca濃度の上昇はCa依存性K電流の活性化を指標として検討した。その結果、0.1mMGDPβS投与下ではADPβS感受性受容体を介する細胞内Ca濃度上昇は認められなかった。また、2mMGTPγS投与下では、Ca依存性K電流が非可逆的に活性化された。以上の結果より、ADPβS感受性受容体を介する細胞内Ca濃度上昇はGたんぱくを介する細胞内Ca貯蔵部位からのCa放出によるものであることが判明した。
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