研究概要 |
哺乳動物の概日リズムの中枢である視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus,SCN)での振動機構を分子レベルで解明することを目的として研究した。SCN内で自発的に振動している物質にはsomatostatinとArg‐‐vasopressin(AVP)及びそのmRNAが認められており、SCNからの約24時間という時間と時刻情報はAVP含有神経によって中隔核等を経て他の脳部位へ伝達されると考えられる。脳内でAVPを産生、保有している神経核には視索上核と室蒡核があるこれらの核でのAVPの生理、生化学的研究は広く行われている。今回、SCNでは浸透圧非感受性、GABAによる興奮性、corticosterone,dexamethasone等に対する反応性が視索上核や室蒡核とは異なることを明らかにした。また、SCNで光刺激でc-fos(FOS)が発現することからAVPの合成過程でAVP遺伝子上にAP-1 activation siteがあることを示唆するものであるが、視索上核のcDNA上では-560から-54の5'末端上流にはAP-2 site,CRE,GRE siteしか存在しない(AP-1 siteが無い)。これらのことからSCNと視索上核とではAVPの合成過程(転写、翻訳機構を含む)または遺伝子配列に差があるものと考えられ、現在、SCNからのゲノムDNAの解析を始めている。今後の課題としては、昨年同定されたショウジョバエのper遺伝子と相同性のあるヒト及マウスの時計遺伝子との関連性を調べることにある。しかし、per自身にはこれをコードする遺伝子にプロモタ-領域を持たない、従ってtrans-タイプの転写機構調節があるのか又はtim様の別の転写調節因子で時計が発動しているかであり、これらのどの段階でAVPやその転写因子が作用しているのかを解明していく予定。
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