研究概要 |
私たちはヒト・ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)遺伝子を1994年にクローン化に成功し,この遺伝子の細胞特異的な発現調節機構について研究を進めている。この酵素はヒスチジンからヒスタミンの合成を触媒し,肥満細胞や好塩基球に特異的に遺伝子を発現している。培養細胞でもヒト肥満細胞株であるHMC-1やヒト好塩基球細胞株KU-812-Fに遺伝子が発現しており,さらに核run-on assayにて細胞特異的な遺伝子発現は転写によって調節されている事が明らかにした。HDCプロモーターとレポーター遺伝子を繋いだプラスミッドにより,プロモーターの機能を評価すると,発現細胞も非発現細胞もともにルシフェラーゼ活性が見られ,このプラスミッドを使った一過性の発現実験では発現抑制機構の存在が示唆された。さらにこのプラスミッドのプロモーターを5^´側より欠失させ,詳細に検討するとGCboxがこの遺伝子の発現にとって必要不可欠であることが判明した。さらにDNaselや制限酵素でゲノムDNAを処理後,サザン法で検討すると,HDC発現細胞のみがプロモーター領域が高感受性であり,これらの酵素が消化しやすい構造になっていることが判明した。また,HpaIIやMspIによるサザン法や硫酸ゲノムシークエンス法でメチル化されたCpG配列を検索すると,HDC発現細胞特異的にプロモーター領域が脱メチル化されていることが判明した。さらにプロモーター領域のみメチル化したレポータープラスミッドを細胞に遺伝子導入した結果から,プロモーター領域のメチル化はtransactivation能を抑制することが明らかになった。以上より,HDC遺伝子においてDNAのメチル化は細胞特異的な遺伝子発現をコントロールする機構であることが示唆された。さらに今後私たちは,脱メチル化の機構そのものを解決していきたいと考えている。
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