研究概要 |
まず血管平滑筋におけるマクロファージ型NO合成酵素(macNOS)の発現メカニズムについて検討した。薬理学的及び分子生物学的手法(RT-PCR法)を用いた検討の結果,細胞の増殖・分化・ガン化などのシグナリングに関与するチロシンキナーゼがmacNOS遺伝子発現に必要であることを明らかにした。さらに詳細にチロシンカイネースの関与を検討するためウェスタンブロットによりチロシン・リン酸化タンパク質の検出を試みており,現在は組織標本からのSDS-PAGEによる種々のタンパク質の分離まで終わり,抗ホスホチロシン抗体によるチロシン・リン酸化タンパク質の特異的検出を行なっている段階である。また免疫抑制作用を有するとされ,リウマチ療法に用いられてきたキノイド型ジテンペン類も遺伝子発現のレベルでmacNOS誘導を抑制していることを明らかにした。その化学構造,阻害様式が従来より報告されているチロシン・キナーゼ阻害薬と類似していることから,先のウェスタンブロットを用いた実験とも絡め,現在キノイド型ジテンペン類がチロシン・キナーゼの阻害作用を有するか否かを検討している。また我々は新しく誘導されるタイプのNO合成酵素は培養細胞の場合と異なり,通常薬理学実験に使用される2〜3か月齢の動物を用いた場合,血管平滑筋でのみ認められることを明らかにしているが,血管内皮でも薬理学的性格上macNOSとは異なる性質を持つ,これまでに報告のないタイプのNO合成酵素が誘導される可能性をを見いだした。とりわけ血管平滑筋で誘導されるmacNOSはCa非依存性の酵素であるが,この血管内皮で誘導されるNO合成酵素はCa依存的に活性化される一方で,macNOS選択的阻害薬によっても阻害されることを特徴としており,現在その詳細な誘導および活性化機構について検討している。
|