研究概要 |
申請者は無傷培養牛副腎髄質クロマフィン細胞において、従来、受容体刺激等で生成が変動しないと考えられていたイノシトール五リン酸(InsP_5)、イノシトール六リン酸(InsP_6)が、各種刺激に伴い急速に生成される事を報告した(J.Biol.Chem.,1990,265,17700-17705)が、それらの生成経路や生理的意義は不明であった。 最近、イカ巨大神経においてイノシト-オル多リン酸がシナプトタグミンのC2-Bドメインに結合することにより分泌顆粒とシナプス前膜の結合を抑制している可能性が示唆された。InsP_5・InsP_6の開口分泌における役割を明らかにするため、〔^3H〕イノシトールで標識した透過副腎髄質クロマフィン細胞を用いカルシウム刺激によって、細胞内及び細胞外に蓄積されるInsP_5・InsP_6を測定した。その結果、カルシウム刺激により刺激後15秒をピークとして細胞外にInsP_5・InsP_6が有意に放出されることを見いだした。またカテコラミン分泌はこの時間経過より遅れ惹起されうこと、さらにInsP_5・InsP_6添加によりカテコラミン分泌が抑制されることを観察した。以上の結果は、InsP_5・InsP_6がカテコラミン分泌を抑制的に制御している可能性を示唆するものと考えられる。現在、シナプトタグミンのC2B・C2Aドメインの抗体を用い更に検討を進めている。一方、InsP_5・InsP_6の生成経路は1.イノシトール4,5-ビスホスフェイトからホスホリパーゼCによって生成されるイノシトール1,4,5-三リン酸を起源とする。2.イノシトール4,5-ビスホスフェイト以外のリン脂質から生成される。3.イノシトール5-または6-ピューロホスフェイトから生成される。4.ある種の蛋白質から遊離される-----などの可能性が考えられてきた。本研究の結果より、その部は4のある種の蛋白質(シナプトタグミン)からの遊離機構の介在が示唆された。
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