研究概要 |
この研究は、平成8年度においては結合実験法を用いてラット白色脂肪組織のβ_3-受容体に対する各種β-アゴニストおよびアンタゴニストの置換力価の評価をおこない、また9年度においては分子設計システムを用いて各種β-アゴニストおよびアンタゴニストとβ_3-ARとの相互用部位を解析することを目的とした。(結果および考察)(1)ラット白色脂肪組織(WAT)には、高親和性部位(β_2-)と低親和性部位(β_3-)のサブタイプが存在した。(2)選択的β_3-agonistであるBRL37344A,BRL35135A,SR59230Aの低親和性部位(β_3-)に対する置換力価(pKi)は高い値を示したが、これまで臨床的にも使用されている他のβ-遮断薬(ボピンドロールやプロプラノール等)のWATのβ_3-受容体に対するpKi値は低かった。(3)一方、膜7回貫通型のヒトβ_3-受容体とボピンドロールの相互作用部位を分子設計システムを用いて解析した結果、ボピンドロールの各グループ(基)が相互作用するβ_3-受容体のアミノ酸は、(1)プロトン化したアミノ基の場合はAsp117、(2)フェニル基とVa1217,Pro216,(3)ベンゾイルカルボニル基とSer169、(4)インドール環とTrp113,Phe308,(5)インドールmetyl基とAla311,(6)t-ブチル基とVa1116,Pro307,Cys304などであることが判明した。これらの結果は、非選択的β遮断薬ボピンドロールのヒトβ_3受容体に対する相互作用部位は,β_1およびβ_2-受容体の場合とほぼ同じ結果を得ることが判明したが、しかしβ_3-受容体の場合はこれらと異なるアミノ酸残基も相互作用に影響することが認められた。
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