研究概要 |
研究代表者らが新しく見出した細胞内情報伝達物質cyclic ADP-ribose (cADPR)は、リンパ球の表面抗原であるCD38により合成・分解される。またCD38のcADPR分解活性はATPにより抑制される。本研究の目的は、cADPR合成・分解酵素(CD38)のATP結合部位を同定することである。平成8年度の研究計画は、計画どおりに進行し、以下の様に期待された成果が得られた。 1.研究代表者らはすでにヒトインスリノーマ由来のRNAを鋳型にしたPCR法によりヒトCD38cDNAを単離している(J. Biol. Chem. 268, 26052-26054, 1993)ので、このcDNAを発現ベクターpMAL-c2に組込み、大腸菌に導入した。 2. 1.で発現ベクターを導入した大腸菌を培養した後溶菌し、大腸菌内でマルトースバインディングプロテインとして発現しているCD38蛋白をアミロースレジンカラムを用いて精製した。 3.精製CD38をATPの類似体である5'- (p-fluorosulfonylbenzoyl) adenosine (FSBA)とインキュベーションして標識した後エンドペプチダーゼで消化し、得られたペプチド断片をHPLC法により分離・精製した。 4.FSBAに対する抗体を用いたウエスタン・ブロット法により、分解・精製したペプチド断片のなかからFSBAで標識されたペプチド断片を同定した。 5. 4.で同定したペプチド断片のアミノ酸配列をペプチドシークエンサーを用いて決定したところ、CD38の129番目のLysがFSBA結合部位であることが明らかとなった。 以上の結果から、CD38のATP結果部位は129番目のLysであることが明らかになった。
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