研究概要 |
血小板活性化因子(platelet-activating factor、以下PAF)は生理活性脂質の1つで、種々の病態、アレルギー反応、免疫反応に関与し、多彩な生物活性を持っている。PAF受容体遺伝子はGタンパク質を介する7回膜貫通型の受容体である。本研究では、変異PAF受容体遺伝子を導入した哺乳動物の細胞系を用いて膜貫通部位におけるリガンド結合部位の検索を行った。 膜貫通部位に存在し、ヒト、モルモット、ラット、マウス間で保存されている荷電をもつ23個の極性アミノ酸残基をアラニンに転換したモルモットPAF受容体の変異体を作成し、Cos-7細胞に一過性に発現させてリガンド([^3H]PAF)および拮抗剤([^3H]WEB2086)の結合を調べた。拮抗剤に対する結合には大きな変化はなかったが、第2および第3膜貫通部位の変異体はPAFが結合しやすく第5、第6、第7膜貫通部位の変異体はPAF結合が減少していた。次に大きくPAF結合が変化した変異体をCHO細胞に安定的に発現させ、リガンド結合およびPAFによる細胞内情報伝達を検索した。PAF結合の増加した変異体N100A,T101A,S104AではPAFに対する親和性の増加と、より低濃度での細胞内情報伝達系の活性化が認められ、中でもN100Aは構成的に活性化したPAF受容体であることが判明した。PAF結合の減少した変異体H100A,H248A,Q276AをCHO細胞に安定的に発現させたところリガンド結合および細胞内情報伝達いずれも減少していた。さらにH188,H248,H249の3つのヒスチジン残基はPAFのリン酸残基の結合に関与し、水分子とあわせて亜鉛イオンの結合部位を形成している可能性が示唆された。これらの結果を元にPAF受容体の膜貫通部位の3次元立体モデルを作製し、PAFの結合様式を提唱した。
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