研究概要 |
1. ピルビン酸キナーゼ(PK)L遺伝子の炭水化物応答性転写制御領域を構成するLIIにHNF4とNF1ファミリー(NF1LとNF1/Red1)が結合するが,これらはLIIの重複する配列に結合することにより拮抗的に作用することを見いだした.すなわち,HNF4は転写活性を上げるのに対し,NF1LやNF1/Red1はHNF4の作用を抑制する.また,NF1ファミリーはS14遺伝子の炭水化物応答性領域のアクセサリー部位に結合するが,HNF4は結合しないことも明らかにした.したがって,NF1ファミリーはこれらの遺伝子の炭水化物応答性に対する補助因子として機能する可能性が考えられる. 2. PKL遺伝子の転写制御領域のLIIIに作用する転写因子として,ホメオボックスタンパク質のHEXを酵母での遺伝的選択法を使って同定したが,大腸菌で発現させたHEXはLIIIには結合しなかった.しかし,LIIに結合するHNF4やLIに結合するHNF1の活性を上昇させることが見いだされた.HEXはこれらの領域に直接に結合しないので,タンパク質間相互作用によりHNF4やHNF1の活性に影響を与えているものと考えられる. 3. PKM遺伝子転写産物の選択的スプライシングに関与するシスエレメントの同定を行った.その結果,肝癌細胞でのエキソン9の除去とエキソン10の選択に関与するエレメントがエキソン9の3′側とイントロン9の5′側の領域かエキソン10とイントロン10の相当する領域に存在することを示した. 4. PKM遺伝子の転写制御領域のC領域に結合する転写因子のクローニングを酵母での遺伝的選択法を使って試みているが,まだ成功していない.
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