研究概要 |
リガンド依存性転写調節因子の一つであるグルココルチコイド・レセプター(GR)は、クロマチン上で普遍的転写因子や転写調節蛋白質と複雑な蛋白-蛋白相互作用を行っている。GR蛋白質は、C末端側のリガンド結合ドメイン、DNA結合ドメイン、N末端側ドメインから構成されている。このうち、N末端側ドメインはGR蛋白の外郭を構成し、種々の核内蛋白質との相互作用に関与していると考えられるが、その正確な働きは不明である。申請者は、精製GR蛋白と核やクロマチン、DNAとの結合アッセイ系を開発し、GR核結合促進因子(ASTP)とGR核結合阻害因子(MTI-I,-II,-III)を発見し、精製した。促進因子ASTPについては、そのcDNAをクローニングし、一次構造を決定した。ASTPはGRと共にコア-ヒストンを構成するヒストンH3,H4に強固に結合することを見い出した。阻害因子MTI-IIIは、GR結合蛋白質で、DNA結合だけでなく、ヒストン結合をも阻害した。GR蛋白の各ドメインが、GRE領域を含むDNAや促進因子、阻害因子群とヌクレオソーム上でどのように相互作用するかを解析する為には、GR各ドメイン蛋白質を多量にかつ高度に精製する必要がある。平成8年度は、GR蛋白の各ドメインをコードするcDNAをRT-PCR法を用いてクローニングを行なった。平成9年度は、クローニングしたGR各ドメインcDNAをGlutathion S-Transferase(GST)発現プラスミドベクターに組み込み、GST融合GR蛋白を大腸菌内で発現させ、Glutathionアフィニティクロマトで、GR各ドメイン蛋白質を精製した。この大腸菌の発現システムでは、蛋白リン酸化等の修飾のない遺伝子産物が得られた。平成10年度は、バキュロウイルス発現系を用いて、修飾された遺伝子産物の発現を行った。
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