研究概要 |
癌組織においては特異的にゼラチナーゼAの活性化が起こっている。我々はこれまでにゼラチナーゼA活性化因子として膜型マトリックスメタロプロテ-ゼ、MT-MMPを同定した。現在3種類のMT-MMP(MT1-MMP,MT2-MMP,MT3-MMP)がゼラチナーゼA活性化因子として知られている。これらのリコンビナント蛋白を作成しゼラチナーゼA活性化に関わるドメインを解析した。その結果、MT1-MMPのキャタリィティックドメインが直接ゼチナーゼAのN末端を切断することが明かとなった。さらにMT1-MMPはコラーゲンなどの細胞外基質を分解する活性を有することも見い出したが、この基質特異性にはC末端のヘモペキシンドメインが関与することが示された。 3種類のMT-MMPについて癌、およびその他の疾患における発現を検討した。すなわち乳癌組織においてはMT1-MMP発現が最も高頻度であった。次いでMTZ-MMP、MT3-MMPの順で発現頻度が高かった。癌組織においてはMT1-MMP発現のみがゼラチナーゼA活性化と相関していたことから、これらの組織ではMT1-MMPがゼラチナーゼA活性化因子として機能していることが示唆された。MT1-MMP発現は肺癌、胃癌、大腸癌、喉頭癌等の癌組織においても見られた。これらの組織においては癌細胞と周辺のストローマ細胞にMT1-MMP発現が認められた。MT1-MMP発現は癌組織以外に、肝炎、腎炎などの炎症性疾患でも検出された。よってMT1-MMPは癌以外にも組織破壊を伴う疾患にも関与していることが示唆された。
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