研究概要 |
今回の研究において私達は種々疾患の甲状腺組織を用いノーザンブロット法,in situ hybridization法および,モノクローナル抗体TSH受容体を用いた免疫組織化学的染色法を行いTSH受容体遺伝子のmRNAレベルと蛋白レベルにおける発現状態を検索し,種々の甲状腺疾患における甲状腺濾胞細胞でのTSH受容体発現と濾胞細胞の機能さらに甲状腺ホルモン全体におよぼす影響を検討した. A.材料.1996年から1997年にかけて金沢大学第2外科にて手術で得られた甲状腺組織を対象とした.組織は切除後直ちに凍結して-80℃に保存された. B.プローブと抗体.TSH受容体遺伝子の検索に用いたプローブはTSH receptor cDNA vectorである。免疫組織化学染色に用いた抗体はマウス抗TSH受容抗体であり,これらはParis South大学Dr.E.Milgromより供与された. C.結果 1.種々の疾患の人甲状腺組織を用い、TSH受容体遺伝子のmRNA発現、蛋白質発現をnothernblot法,in situ hybridization法,免疫組織化学法用い検討した. 2.これら3種の方法を用いたTSH受容体発現は各疾患別にみてほぼ一致して結果が得られた. 3.バセドー病甲状腺ではmRNAレベル,蛋白レベル共に発現が高度に増加し,バセドー病甲状腺におけるTSH受容体のup-regulation機構が作動していることが推測された. 4.非機能性の甲状腺腺腫,乳頭癌においてもTSH受容体はmRNAレベル,蛋白レベルで発現が増加していた. 5.未分化癌のTSH受容体はmRNAレベル,蛋白レベル共に発現が認められなかった.
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