研究概要 |
本研究の目的は,RLGS(Restriction landmark genomic scanning)法によりヒト前立腺癌におけるゲノムパターンを認識し,腫瘍に共通の増幅及び欠失した遺伝子群を検出することにある。ヒト前立腺癌の症例、前立腺癌細胞株及び前立腺肥大症について解析を行い、更に数例の前立腺癌全摘例を用いた組織学的mappingとゲノム変化のmappingを対比することで前立腺癌の増殖,進展の分子機構を明らかにする。 1.前立腺癌細胞株(DU145,LNCaP,PC-3)のRLGSゲノムパターンを比較して検討したところ、11個の増幅スポットに共通性を見い出した。(Cell Mol.Biol.,42:1129-1135,1996) 2.前立腺癌全摘症例6例を用い、各腫瘍から3箇所の組織的に異なる部位を選び、正常組織とのRLGSパターンと検討した。共通した3個の増幅スポット、8個の減弱ないし消失スポットを見い出し、この中には組織的gradeに相関して増減するスポットも含まれていることを報告した。(Am.J.Pathol.,150:305-314,1997) 3.前立腺肥大症16例を正常前立腺組織とのRLGSパターンを比較検討したところ、前立腺癌に認められたような共通性のあるスポット変異はなかった。(L.Urol.,157:1499-1503,1997) 以上の結果から、前立腺癌に特異的なゲノム変化があることが判明した。また、RLGS上の増幅ないし減少スポットのいくつかは現在までに報告されてきた変異とオーバーラップするものもあるが、未知の変異も多く存在し、今後の前立腺癌発生、進展に対するアプローチの一つになると思われる。
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