研究概要 |
Wilms腫瘍関連遺伝子WT1の腎・泌尿生殖器器器官形成およびWilms腫瘍発生における機能を明確にするために,Denys-Drash症候群患者,特にintron 9 splicing donor site変異症例を中心に遺伝子解析を行った。 1.intron 9 splicing donor siteの変異によるsplicingの異常 Denys-Drash症候群の解析によって我々が見いだした,新たな3種類のintron 9 splicing donor siteの変異部分を含み,splicingが行われるようなWT1発現ベクタを作成し解析した。その結果,正常では2つのalternative splicing産物に対応するPCR産物が確認されたが,intron変異症例ではいずれも9塩基長いPCR産物が認められなかった。これによって上記のintron変異によってexon 9のalternative splicingに異常を来すことが示された。現在splicingの異常がin vivoで生じていることを確認しているところである。 2.intron 9 splicing donor siteの変異症例の臨床像 これら5症例の床像を詳細に検討したところ,いずれも典型的なDenys-Drash症候群と比較して腎障害の進行が緩徐であり,Wilms腫瘍を伴っていないという共通した特徴が認められた。一方核型46,XYで外性器完全女性化であり,性分化異常は顕著であった。このことは,同部分の変異症例は通常のexon変異症例と異なった病態を形成することを示しており,さらにexon 9alternative splicing産物の間に器官形成・腫瘍発生において機能的差異があることを示唆するものである。
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