研究概要 |
神経膠腫において,パラフィン切片を用いた増殖マーカー及びp16遺伝子産物に対する免疫組織化学的定量解析,およびパラフィンブロックより細胞解離させた裸核標本によるFISH studyについて,以下のごとく若干の知見を得た. パラフィン切片を用いたモノクローナル抗体MIB-1,cdc2,および抗DNA topoisomerase II α抗体による免疫染色によって、腫瘍の増殖能は組織学的悪性度と強く相関することが確認された.一方,p16免疫染色において,その陽性細胞率は,腫瘍の組織型や上記の増殖細胞率との間には相関関係は明らかでなかった.しかし,増殖能が高いものにおいて,核のp16陽性像は減少する傾向があり,それに伴って細胞質が染色されるものがあった.これにより,蛋白が作られても,核内への移行に障害のある可能性が示唆された.パラフィンブロックから採取した裸核細胞を用いたFISH studyに関して,第7,10および17番染色体特異的セントロメアプローブを用いてhybridizationを行い得た.hybridization前に50%glycerol液によるunmaskingを行ったものの多くに,良好な結果を得ることができた.これによると,悪性度の増加に伴って第7番染色体数の増加(trisomy以上)と,第10番染色体数の減少(monosomy)が確認された.これに対し,第17番染色体の増減は,症例により認められたが、悪性度との間に一定の相関は見られなかった.一部の症例に,p53に対する座特異的コスミドプローブと第17番染色体セントロメアプローブによる二重染色を行ったところ,p53のdeletionはほとんど検出されなかった. これらのことより,腫瘍の組織学的悪性度と,その増殖能及びFISHによる染色体異常に一定の相関のあることが認められた.しかし,p16陽性細胞率とそれらの関係は必ずしも一定の相関があるとは言えなかった.
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