ヒト肺腺癌の腫瘍浸潤部局所における活性型MMPsの証明、産生細胞の特定とその活性化機構の解析を行った. 1.In situ gelatin-zymography法による浸潤部局所における活性型gelatinaseの証明 (1)Stage III浸潤腺癌では腫瘍浸潤部の腫瘍包巣周囲に、腫瘍中心部に比して明らかに強いgelatin分解活性を認めた.Stage I肺胞上皮癌では肥厚した肺胞中隔内にgelatin分解活性を認めたが、腫瘍細胞周囲の活性はほとんど観察されなかった. (2)これらの活性は、EDTAおよびphenanthrolinで抑制され、PMSFやNEMでは抑制を受けず、MMPに由来するものと考えられた. (3)胸膜浸潤部にgelatin分解活性が観察された. (4)血管浸潤部におけるgelatin分解活性は今回の検討では明らかにできなかった. 2.Microdissectionにより取り出した浸潤部局所におけるgelatin分解活性のgel gelatin zymographyによる解析 (1)浸潤部組織には、潜在型MMP-2、-9に加え、活性型MMP-2が検出された. 3.In situ hybridization法によるMMP-2ならびにMT1-MMPのmRNAの局在 (1)MMP-2のメッセージは、腫瘍組織内外の間質細胞のほか腫瘍細胞にも検出された. (2)MT1-MMPのメッセージは、浸潤部の腫瘍細胞に発現が強い傾向が見られた. 以上の結果から、ヒト肺腺癌の浸潤部-(膜部浸潤部を含め)においては活性型gelatinaseが重要な役割を演じており、主体は間質細胞と腫瘍細胞から分泌されたるMMP-2であり、その活性化には腫瘍細胞の産生するMT1-MMPが関わっていることが明かとなった.
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