研究概要 |
本研究において、我々が樹立したT細胞株(STO-2)はPI5,6,7,8および9の5つの異なる好酸球遊走因子を産生しているが、各遊走因子はそれぞれ異なる生物作用を示す事を明らかにした。また、これらの因子の多く(PI6,7,8および9)は現在発見されているエオタキシンやランテスなどのケモカインをはじめとする好酸球遊走因子と全く異なる因子と予想されていた。 臨床的な応用においても、これまで好酸球が関与するヒト疾患患者の好酸球を用いて上記のSTO-2由来好酸球遊走因子に対する遊走能を検討を進め、以下の事実が明らかになった。 1 木村氏病患者の好酸球の遊走は皮膚症状の有無により異なる。 2 アトピー性皮膚炎患者の好酸球の反応性は合併症の有無や重症度によって異なる。 3 気管支喘息患者の好酸球の遊走能は、重症度によって異なり、とくにステロイド使用の必要性の有無を知ることができる。 4 好酸球性肺炎患者の場合には再発しない急性好酸球性肺炎患者と再発を繰り返しやすい慢性好酸球性肺炎患者の鑑別や治療効果の判定に利用される、等が明らかにされた。 さらに我々は、STO-2由来の好酸球遊走因子のうち喘息患者のT細胞が抗原刺激によって産生遊離するECF-PI7について精製を進め、高度精製された因子に対するポリクローナル抗体を用いてcDNAクローニングの作製を試み、新しい好酸球遊走因子のcDNAを得た。この因子は分子量約3.6kDのガレクチンファミリーに属する好酸球特異的な遊走因子で、Ecalectinと名付け、現在リコンビナントEcalectinの作製、さらにはEcalectinに対するモノクローナル抗体やRT-PCR法に用いるプライマーを作製し、Ecalectinの生物学的作用をより明らかにするとともに、喘息をはじめとするアレルギー疾患患者の肺胞洗浄液などを用いてこの遊走因子の臨床における意義について検討を進めている。
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