研究概要 |
1 我々は、初代培養肝細胞を用いた実験により肝幹細胞様細胞(small hepatocytes)の分離、同定を行い、また肝細胞の分化、増殖に関わる諸因子の影響を検討してきた。small hepatocytesはコロニーを作るように増殖をし、1個の細胞が数百個の細胞に増殖した。この細胞は増殖因子を培養液中に加えなくても増殖するが、TGF-αを加えるとその増殖が良く促進された。small hepatocytesのコロニーは非実質細胞、特に肝上皮様細胞や星細胞に囲まれるとその増殖が抑制され、それらの細胞がコロニーの下に潜り込むとsmall hepatocytesは徐々にその形を変え、立方形や直方形になった。つまり、small hepatocytesはその体積を増し、背丈が高くなった。超微構造を観るとミトコンドリアやペルオキシゾームなどの細胞内小器官やtight junction,gap junction,desmosomeなどの結合装置が発達し、グリコーゲン顆粒が豊富で明らかに成熟した肝細胞であった(論文投稿中)。 2 我々は又、培養肝細胞が分化能を維持する条件の検討も行った。分離した細胞を一旦増殖させ、そのうえで分化誘導をかけると生体内に近いレベルまで分化機能を誘導できることがわかった。この実験系において培養肝細胞は、高分化した肝細胞でのみ誘導されると考えられるTryptophan oxygenase、Serine dehydrataseやP-450などの酵素を持ち、ギャップ結合蛋白質のconnexin32,26を発現していた。 3 増殖期の肝細胞がその増殖を止め、分化するときに遺伝子の転写調節が急激に変化するが、そのときに重要な働きをする因子を検索した。肝臓に多く発現している転写因子にはHNF-1,-3,-4,C/EBP-α,β,δなどがあるがそのうち、HNF-3γ,HNF-4,C/EBP-α,-βの発現が十分になされていることが肝細胞特異的な高分化機能を発現するようになるためには重要であることが解った。
|