研究概要 |
1.レンサ球菌サイクリックADPリボース(cADPR)代謝酵素N末アミノ酸配列に相当する遺伝子断片のクローニング 精製酵素のN末アミノ酸配列を決定し、PCR用オリゴヌクレオチドプライマーを作製した。種々の条件を検討しながらA群レンサ球菌DNAを鋳型にPCRを行った結果、予想される大きさのDNA断片(120bp)が増幅された。このDNA断片をクローニングし、塩基配列を決定したところ、レンサ球菌cADPR代謝酵素をコードする遺伝子の一部であることが判明した。 2.cADPR代謝酵素遺伝子塩基配列(1次構造)の決定と発現系の構築 上記120bpDNA断片をプローブにして行ったサザンブロット解析をもとに、染色体遺伝子プラスミドライブラリーを構築した。次に、プラスミドベクター上に設計したプライマーと120bpDNA断片上のプライマーによりsingle specific primer-PCRを行い、その増幅産物の塩基配列を決定した。目的遺伝子は全長1,353bpで451アミノ酸残基の分子量50,703の蛋白質をコードしていた。精製酵素のN末端との比較から,37アミノ酸残基のシグナル領域を持つことが推定された。また、このレンサ球菌cADPR合成・分解酵素は1次構造上、cADPR代謝活性を示す酵素である哺乳動物リンパ球表面抗原CD38、骨髄幹細胞抗原BST-1やアメフラシADP-ribosyl cyclaseとの相同性は認められなかった。決定した塩基配列をもとに、PCRを用いて本酵素構造遺伝子全長をクローニングし、大腸菌内で発現させた。その結果、ウェスタンブロット解析にて元株と同じ位置にバンドが検出され、酵素アッセイにてNAD分解活性・cADPR代謝活性が確認された。以上のことからレンサ球菌cADPR合成・分解酵素は新しいタイプのcADPR代謝酵素であると考えられた。
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