研究概要 |
CAP18(Cationic anti-microbia1 protein of 18kDa)はヒトの好中球の特殊顆粒に存在しそのC末端27〜32残基のペプチドはグラム陰性菌,陽性菌に抗菌活性を示し,また,エンドトキシン(LPS)と結合してこの活性を中和する。今回は,27残基ペプチドのin vitroでの抗菌活性やinvivoでのエンドトキシショック,緑膿菌感染モデルヘの影響について検討した。抗菌活性;(1)S.typhimurium,S.aureusに対するIC50はそれぞれ3.2,5.6μg/mlであり,E.coliO157:H7 に対するIC50は5.1〜8.0μg/mlであった。エンドトキシンショックの防御;(2)E.coliO157:H7のLPSを0.1μgマウス腹腔内に投与した群では33%の生残率であったが,同時に10μgのペプチドを腹腔内に投与した群の生残率は50%,20μg投与の生残率は100%であった。感染モデルにおけるエンドトキシンショックの防御;(3)緑膿菌感染マウスにβ一ラクタム剤のセフタジジムを腹腔内投与すると,1日以内に94%のマウスが死亡したが,感染30,90および150分後にペプチドを投与した群では死亡率が25%であった。(4)緑膿菌感染マウスにセフタジジムを投与すると,2時間後に血中のLPS濃度が増加したが,感染30および90分後ペプチドを投与するとLPSの増加が抑制された。ペプチドの化学修飾;(5)N端およびC端をそれぞれアセチル化,アミド化したペプチド(Ac/NH2)のLPS結合活性は両端がフリー(Free)のものと同じであった。(6)E.coliO157に対するFreeのペプチドの抗菌活性はAc/NH2の1/4以下であった。(7)Ac/NH2ペプチドはLPSによる致死を有意に防御したがFreeのペプチドは防御効果を示さなかった。27残基ペプチドはN,C-末端の化学修飾で活性が高まること,また,抗生剤で誘発されたエンドトキシンショックを防御することが認められた。
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