研究概要 |
これまでに川崎病患児の歯面より分離、同定されたStreptococcus mitis(S.mitis),Nm-65株の培養上清中に血漿に浮遊したヒト血小板(platelet rich plasma,PRP)を凝集、活性化する因子(S.mitis-derived human platelet aggregation factor,Sm-hPAF)の存在することを明かにし、この因子の精製を行うと共に、その性状について報告して来た(FEMS Immunol.Med.Microbiol.,17,121,1997)。この研究の過程で、Sm-hPAFによって凝集するPRPと凝集しないPRPが存在することが明かにされた。本研究では、Sm-hPAFに応答しないPRPの反応機構を明かにすることを目的とした。既にこれまでの研究において、Sm-hPAFに対し凝集しないPRPは血小板自体に異常があるのではなく、血漿中にこの凝集反応を阻害する因子が存在することを明かにした。そして、凝集反応を起こさなかったヒトの血漿をSephacryl S-200でゲル濾過し、抑制因子を含む分画を得る一方、この分画をマウス並びにウサギに免疫することにより、抑制因子の作用をblockするモノクロナール抗体(mAb)とポリクロナール抗体を作製し、さらに、このmAbを反応系に添加することにより、抑制反応が解されることを明らかにした。また、mAbを用いたWestern blot並びに糖染色から55kDaに相当する糖蛋白が抑制因子ではないかと想定された。ヒト肝細胞cell lineの培養上清中にこの抑制因子の存在することを見い出し、現在その濃縮液から、mAbで用いてaffinity columnにより抑制因子の精製を試みている。mAb並びにポリクローナル抗体を用いて、Sandowich-ELISA法により抑制因子の定量化の為の基礎実験なされた結果、Sm-hPAFと反応しないPRPの血漿中には反応するPRPの血漿に比し、抑制因子が多く存在することが明らかにされた。かかる因子の存在とその定量化に関する臨床的意義についてはさらに検討しなければならない。
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