研究概要 |
T細胞の活性化におけるチロシンキナーゼItkの機能的役割を明らかにする目的で、各種T細胞表面抗原を単クロン抗体により刺激し、Itkのチロシンリン酸化が惹起されるか検討した。その結果、抗CD2,抗TCR/CD3および抗CD28抗体で架橋後速やかにItkのチロシンリン酸化が起こった。このリン酸化の経時変化を調べたところ、刺激後1分でリン酸化が最大になっていた。また、Itkのチロシンキナーゼ活性を検討したところ、抗CD2,抗TCR/CD3および抗CD28抗体の架橋により活性が約5倍まで上昇した。以上より、T細胞活性化へのItkの関与が示唆されたため、T細胞表面抗原からのシグナル伝達の最終的な標的であるIL-2プロモーターの対するItkの必要性を検討した。野生型Itk,チロシンキナーゼ活性を欠損したItk(ItkK391E)を発現する発現ベクターあるいはコントロールベクターをヒトT細胞株Jurkatに遺伝子導入し、表面抗原刺激に対するIL-2プロモーター活性をIL-2ルシフェラーゼ(IL-2Luc)を用い検討した。抗CD2、CD3あるいは抗CD2、CD3、CD28の両刺激により惹起されるIL-2プロモーター活性化は、K391Eにより強く抑制された。一方、野生型ItkはIL-2Lucを増強した。さらに、IL-2プロモーターの各種反応性エレメントの中でも特に重要であることが判明しているNFAT反応性エレメントに対する影響をNFATLucを用いて検討した。その結果、K391EはCD2,TCR/CD3のいずれの刺激に対しても強く抑制を招来した。以上の結果から、ItkはCD2,TCR/CD3からIL-2プロモーターなかんずくNFATに至るシグナル伝達に必要であり、T細胞活性化に極めて重要な役割を担っていることが証明された。
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