研究概要 |
相同組み換えによるマウスCD7抗原遺伝子欠失マウスの作出について:T細胞上にCD7抗原の発現が認められないヒト重症免疫不全症の患者が報告されており、CD7抗原が免疫系において重要な働きをすることが想像された。そこで本研究では、CD7遺伝子欠失マウスを作出し、CD7の機能の解析を試みた。病理組織学的検査では、造血系組織の骨髄、胸腺、リンパ節、脾臓をはじめ、各種組織に於いてはwildタイプとK◯マウスに相違は認められなかった。また、各種リンパ球の構成をCD4,CD8,CD3,Tcrαβ、TCRγδ,B220,IgM,NK1.1抗原をマーカーとしてF1ow-cytometlyで検査したところ、両者に相違は認められなかった。さらにリンパ球の機能検査を目的としてConA,LPS,anti-CD3,PMA/lonoを用いた幼弱化試験を行ったがやはり両者に相違は認められなかった。抗体産性能についても差は認められなかった。抗体の作製について:マウスCD7のアミノ酸配列を基に4種のペプチドを合成し、抗体を作製した。また組み換え型抗原を6種作製し、これらを抗原として抗体を作製した。抗体の検索はペプチド抗原を用いたELISA法、及びマウスCD7を発現させたCos7細胞を用いたWestern-blottingで行った。マウスCD7抗原の細胞内ドメインの組み換え型抗原で作製した家兎抗体のみがマウスCD7を発現させたCos7細胞を用いたWestern-blottingで特異bandを認識した。しかしこの抗体を用いて、マウス胸腺、脾臓、腸管を染色したが、陽性所見は得られなかった。 以上の結果より、残念ながらマウスCD7抗原の機能を明らかにすることが出来なかったが、その原因として、他の抗原が機能をカバーしているか、あるいはマウスCD7抗原遺伝子が何らかの要因で生理的に発現していないことが示唆された。
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